Caballero Flat Trackをトップビルダーがカスタマイズ。ホットドックが魅せたレーシングマシンの美しさ。

Caballero Flat Track by HOTDOCK

NUMBER PLATE by HOTDOCK for Caballero Flat Track 250

日本のハーレー・ダビッドソン・カスタム文化において、常にフロントラインで活躍し、知らない人はいないと思われる『HOT-DOCK CUSTOM CYCLES』の河北啓二氏が楽しんでいるオートバイ遊びが、フラットトラックである。半円のカーブ2個を2本のストレートとつないだ土のオーバルコースを、派手なカウンターをあててスライドしながら走り抜けることに熱中している。ダートラ、といった方が通りがいいかもしれない。その面白さをこう語る。

Keiji Kawakita, HOTDOCK

河北:「フラットトラックはむずかしいから楽しいんだと思いますね。ボクもまだまだこの趣味の浅いところにいるから大きいことは言えなんですが。ロードのサーキットはオートバイを運転することができる人なら、最初からそこそこ走れちゃんだよね。峠とか走っていたような人ならもっとしっかり走れる。フラットトラックは最初からまったくできないのよ、ハハハハ。どうしていいかわからないくらいできない。走れるイメージもできない。それでできる人に聞いたり、スクールみたいなのに入ったりして、少しスライドする感覚を知って、滑ってどうしようもないと思っていた土の上が意外とグリップすることを知って、転んでも土だから大丈夫って思っていたら、実際はものすごく痛いってことを知って、だんだんできるようになって、それでハマったんだね。」

 

河北:「いままで何でもやってきたけど、最初にまったくできなかったのはこれだけだよ。林道走ろうよってなっても初めてでもある程度走れてしまうでしょ。モトクロスコースだってちょっと飛んだり、コーナーリングしたり、なんとかなる。でもフラットトラックはできなかった。だって、いままでどんなジャンルでも転ばないようにやってきたじゃない。これは前後タイヤを滑らさなければいけないから、言うならば転ばせるようなもんじゃない。いきなり勢いよくなんてできないよ。ブレーキは使わないって??? 頭がこんがらがっちゃう。これまでの経験がまったく使えない。練習していって、それにはスピードが必要、ちょっとした角度で動きが変わるなどとわかる。そうやって理解していってもコースによってコンディションが変わると同じようにできなかったりする。その奥が深いところが面白いよね。

そんなフラットトラックにハマっている河北さんがFANTIC Motor JapanとコラボしてCABALLERO Flat Trackをベースにした魅力的なカスタムマシンを作り上げた。

Caballero Flat Track 250 by HOTDOCK

Caballero Flat Track 250 by HOTDOCK from front

素材となるCABALLERO Flat Track をはじめて前にして、これは面白い車輌だと感じたという。フラットトラック好きの心を刺激した。

 

河北:「いや〜、ベースマシンはよくできているなって思いました。シャシーのバランスとか王道のカタチに近いんですよ。昔からボクらが乗っている“フレーマー”というスタイルがあるんですよ、その流れがちゃんと入っている。変にやらないで、フラットトラックマシンとして素直に作っているのが素晴らしい。」

Fantic Caballero Flat Track 250

この競技が盛んなアメリカで、昔からフラットトラックのフレームビルダーが走りを高めるために作ってきたスチールパイプのレーサーが“フレーマー”と呼ばれる。その本場のレーサーの雰囲気があるところを気に入り、カスタムをやりやすいとすぐに感じた。

 

河北:「これはちゃんとフラットトラックマシンになっているから、フレームまでムキになってイジる必要はまったくないなって」

Keiji Kawakita and Fantic Caballero Flat Track

はじめは制作している傍らにあったフラットトラック系カスタムパーツとして有名な米Storz社のタンクとシートがあってそれを載せてみた。

河北:「何気なくやってみたら、これがベストフィットなんだよ。これは鉄板。今まで、いろいろダートのカスタムしてきたけれど、なかなかこれを超えられない。カッコ良すぎちゃって。もうこうすると頭の中がこればっかりになって自由な発想ができないんだよね。あまり時間がかからずに、もう終わり! これで完成! ってね(笑)」

 

そこから悩んで、まずは違うタンクにして、違うシートにしてとやっていったのが最初の段階だった。河北さんはそこからどうスタイリングしていくのか。考え抜いて浮かんだイメージをスケッチにして、そこから────と想像するかもしれないが、そうではない。なんと、まずはいきあたりばったりで手を入れていく。

 

河北:「まずはやっちゃって、おかしいと思ったところを思い切って切る。そうやって手を入れたところを途中で大きく変更しないで、利用するようにして試行錯誤していくと、自分が思ってもみなかったカタチができるんです。それが面白い。『うわーこんなのできちゃった』みたいな。だからやる前にいくら考えてもできない姿になるんですよ。現物合わせでやっていって、これじゃダメだ、ああしたら、こうしたら、とやっていたら誰も思いつかないようなラインやカタチが生まれる。」

 

誰もが評価してきたスタイルを壊す。こうしてお決まりのパターンを1度分解して、新しい姿に再構築していく。

 

河北:「ある意味でどんどんカッコ悪くしていく作業なんだけど、その中から他とは違う個性的で美しくバランスがとれたものが生まれる。最初は型紙みたいなのを作って、それを現物に当てて、良い具合だったら鉄板をカットしながら、丸め込んだり、ちょっとずつラインを削ったり、アールを作ったりしながら合わせていく。新しく作った燃料タンクは、ガソリンが漏れたら大変なので、しっかり溶接して、燃料ポンプを仕込むスペースを作った。シュラウドはまだしもサイドカバーのメッシュのところは何の機能もないけれど、そのままだと面積が広くて間延びして見えるから、これを入れることで動きが出るんだよね。そしてギア感も出る。」

side plate by HOTDOCK for Caballero

河北さんはこういうメーカーとのコラボレーションで大切にしていることがある。それはフレームや足廻りなど基本的な骨格はいっさい変えないこと。切った貼ったをやるほうが楽にできるけれど、それをやってしまうと別のオートバイに変わってしまうから。今回もそれをつらぬいた。あくまでもCABALLERO Flat Trackを尊重する。

 

河北:「カスタムのハードルが高くなるのは分かっているんですが、そこはきっちり守るって決めてますね。それでうまくカッコ良いものができたときの達成感がたまらないですね。『やったぜ!』みたいな。カスタム屋としての腕の見せどころですよ」

 

具体的にはシートレールを切って取ってしまえば自由度があがるけれど、やらなかった。ラジエターも小さくしたり場所を移したりしないで、あえてスタンダードのラジエターをそのまま使うデザインに仕上げた。ラジエターの上にある白い樹脂のリザーバータンクも、取り外したり移設せずに黒いカバーをしてカタチに取り込んだ。これは市販車として売られている元の姿にすぐに戻せるカスタムである。ハンドルバーもそのまま。フォーク、トリプルツリーなどもそのまま。ダウンエキゾーストパイプに取り付けてあるサイレンサーは、2本ある純正サイレンサーの1本をあえて使っている。

radiator shroud by HOTDOCK for Caballero

HOTDOCK custom for Caballero

muffler custom by HOTDOCK for Caballero

もちろんフラットトラック走行が好きな河北さんだから、見た目だけでなく走りを考えて変更した部分もある。

 

河北:「もっと重心が低い方がフラットトラックは走りやすいので車高を下げました。ノーマルは街も走る市販車だから、いろいろなシチュエーションを考慮しているのと、海外メーカーだから日本人よりちょっと大きな人も無理なく乗れるようにしているんだと思う。それでコースでもっと乗りやすいようにリアショックのリンクを車高調節できるようにしたのね。だから10分で元に戻せるし、ライダーの体型や好みでジオメトリーを変更することも簡単。プリロードが調整できるリアショックだから、それも便利に活用した。」

 

height controller for Caballero

この中で本人が苦労しながらもうまくできたと気に入っているところは、シュラウド、燃料タンク、シートが重なるところにある赤いパイプベースの造形物という。

seat for Caballero by HOTDOCK

河北:「この機能がないわけのわからない部品は、これがないと段差が目立って個々のパーツの面がうまくつながらないんだよね。かといってピッタリ合わせこむのも難しい。細いパイプにアルミを盛って、それを削って赤くペイントした謎のこの間を取り持つパーツがあることで一体感が出た。簡単に言ってしまえば現物合わせをしながらなりゆきで作っていった中で見つけた美しく見せるアイデアなんだよ。どれかをかぶせて隠してもこれはタナボタじゃなくヒョウタンから駒だね。これは最初から考えて生まれるものじゃない。」

Caballero Flat Track 250 by HOTDOCK

Keiji Kawakita, HOTDOCK

河北:「FANTICはヨーロッパメーカーなのにフラットトラックに注目して真面目にマシンを作ってくれた。このことに、この遊びが好きな者としてすごくうれしいね。大いにそれを歓迎したい。こういう流れを大切にしていきたい。レースを主体としないから先鋭化せずに、自分のペースで走れる。入り込みやすいと思う。すぐに遊べる。」

 

HOT-DOCK-CUSTOM-CYCLES

http://www.hot-dock.co.jp/

東京都練馬区貫井5-16-6/ TEL:03-3926-0220

 

 

Interview & written by Fumio Hamaya

Photograph taken by Koichiro Suzuki

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です