Caballeroがやってきました。
Fantic Motor社にとって、Caballeroは本当に大切なペットネームです。Fantic Motorが最初にオフロードに進出した時に用意したモデルに与えたネームが、Caballeroでした。「騎士」を意味するそのペットネームは、以降、Fanticが用意するオフロードモデルの多くに名付けられてきました。最初のCaballeroから50年。記念モデルも間もなく、日本に入ってきます。
そのCaballero、今ではFanticのモデルラインアップの中でも「ブランド」といっていい位置づけに育っています。現代のFanticでは、Caballeroを名乗るモデルがストリートモデルとして位置づけられ、ストリートをきちんと走らせることができる実力をまずは抑えながらも、オフロードモデルとして十分以上の性能を有している、すなわちFanticのCaballeroならではのマルチパーパス・モデルとしても作り込まれているシリーズなのです。そのなかでもScramblerは抜群のストリート性能を有しながら、十分以上のオフロード性能を誇る、ほかに似たもののないモデルとして高い評価を得ています。
現代のスクランブラーがお手本にしたモデルが、元祖Caballeroでした。Fantic Motor社は、小排気量で頭角を現してきたヒストリーを大切にしています。ですから、今もEnduroシリーズには50㏄モデルがあります。現代のFantic Enduro 50やSupermoto 50は、ヨーロッパではいわゆるボーイズレーサーとしてキッズたちの間に強い人気がありますし、ヨーロッパ選手権やイタリア選手権といったレースの場でも、依然としてチャンピオンを獲り続けている実力派です。Fanticが今もなお、50㏄クラスにこだわっているのは、キッズライダーたちにフルサイズのモデルの魅力を提供し、モーターサイクルの楽しさの入り口であり続けたいという、Fantic Motorならではのポジションを大切にしているからなのですが、そのヒストリーは、初代Caballeroにありました。
50年前の1969年、ミラノ・ショーに初めてCaballeroを展示、オフロード・シーンに飛び出したFantic。1970年から量産を開始したレゴラリータ・モデルのCaballero 50は、4速のギアボックスを搭載したストリート・レゴラリータとしてデビューしました。その後、レース専用モデルなどもバリエーションに加えながら、Caballero 50はイタリア選手権のチャンピオンを獲得するまでに進化していきます。同時にファンティックはトライアルの世界にも力を入れ始め、1985年には初めてタイトルを獲得します。その少し前、70年代の後半に、Caballeroシリーズに大きな変化が加わります。Fanticが設計した、冷却性能を高めたシリンダーとヘッドの採用です。
もともとファンティックは、エンジンは同じイタリアのエンジン・メーカーであるミナレッリから調達していました。ところが、競技志向を高めていくファンティックにとって、ストリートモーターサイクル向け汎用エンジンであったミナレッリのエンジンでは力不足。耐久性はありながらも、他を圧倒する高性能を求めて、ファンティックは放射状に広がる空冷フィンを設計、採用したのです。ギアボックスには6速を組み込み、50㏄ながらに70mph(約112kph)もの最高速に到達するエンジンを作り上げたファンティックは、免許制度上50㏄にしか乗れないヨーロッパ、とくにイギリスの若者を虜にしました。
その6速トランスミッションとラジアルフィンを備えたスクランブラーモデル、当時で言うレゴラリータが、Fantic Regolarita Super 6Mです。キャバレロシリーズは、トップスピードを狙ったモデル(GTシリーズ)とは異なり、オン&オフモデルとしての完成度を高めるべく、ストロークの豊かなサスペンションを備えています。1978年にはファクトリーマシンとしてMik26(ミクニ26㎜キャブレターを標準装備)というマシンをデビューさせたファンティックは、これをストリートマシンに展開。エンジンの素性はそのままに、耐久性を重視し、乗りやすさも犠牲にせずにデロルト製キャブレターを装備させたのがこの、TX190 スーパー6Mなのです。
日本にはほぼ流通していないこの貴重なビンテージ・ファンティックは、我々ファンティック・ジャパン・ショールームのスタッフが、その長い海外との付き合いから育て上げたスペシャル・コネクションを通じて入手した逸品です。写真でご覧いただけるように、コンディションも極上。しかし、そのスタイル、ディテイル、ロゴ、すべてに現代のファンティック・キャバレロ・スクランブラーに通じるアイデンティティが流れていることが一見してお分かりいただけるはず。
ビンテージ・ファンティックは東京都世田谷区尾山台、環状8号線外回りにあるファンティック・ショールームにて展示中。ファンティック・ファンの皆様も、あるいはビンテージ・モーターサイクルファンの方も、ぜひ一度ご覧になりませんか。なお、モーターサイクルは動かしてなんぼの乗り物であることには変わりがありませんから、この貴重なビンテージ・ファンティックも、遠からずエンジンに火を入れ、野山を走らせていく予定です。
ショールームでは世界のネットワークを通じ、こうしたビンテージモデルを入手することが可能です。今回紹介させていただいたFantic Caballero Regolarita TX190 Super 6Mも、販売可能です。ご興味をお持ちの方は、ご遠慮なくお問い合わせください。以下、ディテイルを紹介させていただきます。
たたずまいが素晴らしい。
マルゾッキ製のフロントフォーク。アウターケースにはファンティックのネームが。
50㏄なだけに、膨張室は小さめのチャンバー。
アッパーマウント2カ所、ロワーマウント3カ所でレイダウン量の調整が可能なリアショックユニット取り付け。サイドスタンドはなくセンタースタンドのみ。
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